アウトカム分析|Outcome Analysis
医療の質を考える上で,アウトカム(治療結果)は不可欠な要素です.ただし医療では,患者の個々の状態像が異なるため,アウトカムを考える上では,重症度を考慮した指標を用いることが重要です.一方で日本においては,多くの領域において重症度補整の議論が行なわれておらず,手術死亡率をはじめとした施設の治療成績が母集団のリスク違いによって左右されることが無視されたものとなっているのが現状です.このように適切なアウトカム指標が確立しない状態で情報公開だけが先行した場合には,医療提供者側がリスクの低い患者を回避し,重症患者が医療を受ける機会が損なわれてしまうことが,海外の事例からも指摘されています.医療品質評価学講座においては,患者のための最善の医療を長期的に提供することができる体制を構築するため,体系的なデータ収集に基づいたアウトカム分析を行っています.
心臓外科領域では,国際的な枠組みの中で日本心臓血管外科手術データベースを立ち上げ,現在日本の心臓手術症例の半数以上の詳細なデータが蓄積されています,これらのデータ分析から,心臓血管外科手術におけるリスクの同定が行われ,重症度補整された各施設の臨床成績や特徴を示すレポートなどの情報が臨床現場で活用されています.またリスク分析に基づき,患者の術前の条件を入力すると各個人の手術における成功率,合併症の発生率などが瞬時に出てくる予後の推定機能なども実装されています(JapanSCORE).このような情報は医療提供者が術前カンファレンスなどで活用可能なだけではなく,インフォームドコンセントなどで利用されることで,患者側にとっても治療そのものをよりよく理解するために有用となっています.