CONCEPT

医療の質の評価|Performance Measurement

「医療の質向上」を考える上で,第1に重要なのが,各領域における「医療の質」自体を適切に同定し,評価を行うことです.医療に関わらずどのような領域でも,“専門家”という集団が存在する場合には,ハイレベル(あるいは熟練した)な専門家と,経験の少ない(あるいは訓練中の)非専門家との間では,なんらかの差が生まれるはずです.このようなパフォーマンスの指標を各領域で明らかにし,全体との比較の下で改善に取り組むことによって質が向上することは,医療だけでなく製造業や教育などさまざまな分野で広く示されています.

医療における質はStructure(医療提供体制),Process(臨床過程),Outcome(治療結果)によって捉えることが一般的です.例えば心臓外科領域では,“術後30日以内の患者の死亡や再手術,脳合併症の発生”などを専門家が努力すれば発生頻度を少なくすることが可能な指標として定義し,治療結果をベースにした医療の質向上に取り組んでいます.一方で,患者が多くの診療科に関わるような疾患や,短期的な治療結果では差が発生しにくい領域については,治療結果を指標にすることに限界があります.このような領域においては,適切な臨床過程(“ある状態像の患者には投薬Aを行う”,“ある条件においては検査Bを行う”)が行われているかどうかという観点に基づいて医療の質を考えることが有用となります.

このように医療の質向上のためにはStructure, Process, Outcomeの3つの面で改善が行われる必要があります.しかしながら最近まで日本には,ほとんどの領域において,医療の質を示す信頼できる客観的な指標がありませんでした.適切な指標を求めるには臨床現場が理解・納得できる情報を継続的に収集し,その情報を分析・活用するデータベース事業を行うことが必要不可欠となります.

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    National Clinical Database