活動について
日本では2000年から日本心臓血管外科学会と日本胸部外科学会の連携により,米国胸部外科学会との協力の下で,日本心臓血管外科手術データベースを立ち上げました.医療品質評価学講座は上記の学会から当該データベースの管理運営を委託され,データの収集やデータの品質管理,データ解析,解析結果のフィードバック,データを基にした教育プログラムの開発など,医療の質向上にむけた活動に体系的に取り組んできました.2011年には日本心臓血管外科手術データベースや日本外科学会をはじめとした多数の外科系学会が協同し,National Clinical Database(NCD)が設立されました.NCDを基盤に全国規模のレジストリーが多数開始され,医療品質評価学講座は共同研究組織として,さらに活動の範囲を拡大致しました.NCDはその後冠動脈カテーテル治療分野や各種癌登録,病理学会など非外科系領域も迎え入れ,世界でも稀有な規模の領域横断レジストリプラットフォームへ成長しています.
当講座の研究活動の成果の一つとして,日本心臓血管手術データベース,日本消化器外科学会データベースにおいて作成したリスクモデルを挙げることができます.これらリスクモデルをベースに各手術のリスク補正手術死亡率の算出が可能となり,全国の施設にその数字がフィードバックされています.また,症例登録に際しては症例の術前情報から予測される手術死亡率・合併症発生率などが計算され,臨床現場において利用されています.もちろん,これら以外の領域においてもデータベースに登録された詳細な臨床データを活用し,各種投薬や手術手技,医療機器についての評価を行なう他施設共同研究が実施されています.
データベース事業を通した米国胸部外科学会の医療の質向上への取り組みが,様々な領域における改善活動の枠組みとなっていったように,日本におけるこれらレジストリーの成果は,医療における多くの分野で広く応用することが可能な研究・実践活動です.医療品質評価学講座は,この一連の体系的な活動の理論と手法を基に,ますます多くの臨床現場と連携を行なっています.ここで示しているのはこのような連携の中で行われた活動の一部分である,学術的な成果の一部です.